抄録
症例は58歳男性.2002年より夕食前の集中力低下を自覚し,2003年に空腹時低血糖を指摘され当科入院.画像検査では腫瘤影は認められなかったが,IRI/PG比は0.8-1.0と高インスリン性低血糖を認め,ASVSの結果より膵体部微小インスリノーマと考え膵亜全摘術施行.切除膵の病理所見にてnesidioblastosisと診断されたが,術後もインスリン過剰分泌に改善なく空腹時血糖値30~40 mg/dlと低血糖が持続.低血糖による夜間の中途覚醒,日中の集中力低下などの自覚症状も持続するため,本人同意のもと国内未承認薬であるジアゾキサイド内服を開始.同剤開始後よりインスリン過剰分泌は抑制され低血糖症状は消失.現在までジアゾキサイド200 mg/日にて特に副作用は認めず,低血糖症状も消失している.成人発症nesidioblastosisにおいては,術前診断が困難であり,その治療方針は現在まで確立されていない.本例のように術後も低血糖が遷延する成人発症nesidioblastosisの症例では,ジアゾキサイドは長期にわたり有効な治療であると思われる.