糖尿病
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症例報告
streptococcus mutans菌血症と直腸癌を合併した2型糖尿病の1例
橋本 佳明三神 昌樹松本 壮一井上 富夫熊坂 一成
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2010 年 53 巻 12 号 p. 834-838

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抄録

症例は軽度の僧帽弁逸脱症と空腹時血糖高値を指摘されていた71歳の男性.約2ヵ月間持続する38℃台の発熱を主訴に当院外来を受診し,感染性心内膜炎の疑いで入院となった.体温37.9℃,BMI 29.2 kg/m2で,心尖部に最強点を有するLevine 2度の高調収縮期雑音が聴取された.白血球 8000/μl,CRP 7.56 mg/dl,HbA1c 7.6%(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467,2010))で,静脈血培養からstreptococcus mutansが検出されたが経食道心超音波検査で疣腫を認めず菌血症と診断した.感染性心内膜炎で生じる塞栓症検索を目的に行った腹部CT検査で偶然に直腸腫瘤が発見され,内視鏡検査と生検により2型直腸癌と診断した.菌血症に対して4週間の抗菌薬治療を行い,その後開腹手術により直腸癌を切除した.糖尿病患者では菌血症や大腸癌の発症率が高く,まれには両疾患が独立して合併しうると考えられるが,本症例では直腸癌がstreptococcus mutansの侵入門戸であった可能性もある.因果関係の有無については今後の症例報告の蓄積を待ちたい.

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© 2010 一般社団法人 日本糖尿病学会
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