2010 年 53 巻 2 号 p. 107-111
症例は49歳女性.乳癌術後化学療法の通院経過中に発熱を来たし,その後に嘔気·嘔吐·頭痛が出現したため来院.血糖値565 mg/dl,尿ケトン体2+,動脈血ガス分析ではpH 7.278であり糖尿病性ケトアシドーシスと診断され即日入院した.HbA1c 5.9%,血清·尿中CPR低値,エラスターゼ1上昇,膵島関連自己抗体は陰性であり,劇症1型糖尿病と診断した.インターフェロン以外の抗悪性腫瘍薬の使用中に劇症1型糖尿病を発症したという症例報告はなされておらず,今回その成因を考える上で大変興味深い症例と考えたため報告する.