抄録
海外では膵腎同時移植は腎不全を合併した1型糖尿病患者の根治療法として確立し,合併症や生活の質(QOL)を改善することが報告されている.しかし,移植事情の異なる我が国において膵腎同時移植が同等な治療効果を持つか明らかではない.我々は当院で施行した膵腎同時移植のうち1年以上経過観察した13例(平均年齢40歳,糖尿病罹病期間23年,透析期間6年,移植後2.6年)の糖尿病神経障害,大血管障害,QOLの変化を検討した.運動神経伝導速度,心拍変動,胃排出時間は移植後有意に改善し,移植待機患者よりも良好であった.左室肥大や大動脈脈波速度も移植後改善を示した.Short Form-36で評価したQOLは移植患者で待機患者より良好であり,経時的に改善した.一方,待機患者では著明に低下したままであった.我が国の末期腎不全を合併した1型糖尿病患者において膵腎同時移植が神経障害や大血管障害を改善し,QOLを経時的に改善することが示された.