2010 年 53 巻 5 号 p. 331-340
食事・運動療法に加え,必要に応じスルホニル尿素剤を投与している2型糖尿病患者573例を対象に,ボグリボースの糖尿病網膜症および糖尿病腎症の発症・進展抑制効果をプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験により検討した.ボグリボース群は,8週まで1回0.2 mg,その後0.3 mgを1日3回,計144週間経口投与した.ボグリボース群(279例)ではプラセボ群(280例)と比較し,食後2時間血糖値,HbA1Cおよび空腹時血糖値が有意に改善した(p<0.05またはp<0.01)が,糖尿病網膜症および糖尿病腎症の発症・進展抑制に関しては有意な差は認められなかった(p=0.968).ボグリボースの安全性について懸念すべき問題はみられなかった.ボグリボースが長期間,安定的に血糖を良好にコントロールしたにもかかわらず,糖尿病合併症の明確な抑制効果を示さなかった理由として,糖尿病合併症に対する効果はより長期間の検討が必要であることが考えられた.