2010 年 53 巻 6 号 p. 402-405
症例は76歳男性.糖尿病歴約8年でGlibenclamide 2.5mgの内服によりHbA1c 6%台で経過していた.平成17年末に左眼窩部痛と同側の動眼神経麻痺が出現し,Tolosa-Hunt症候群と診断されステロイドパルス療法により改善した.その後も血糖コントロールの増悪は認めていなかった.平成20年2月20日,右側の眼窩部痛と動眼神経麻痺が出現し入院した.MRIでは眼窩部ほか頭蓋内病変は認められなかったが,ステロイドパルス療法により症状の改善を認め臨床症状と合わせて対側に生じたTolosa-Hunt症候群と診断した.Tolosa-Hunt症候群の原因は未だ明らかでなく,画像所見が認めなければステロイド治療前に糖尿病眼筋麻痺と鑑別することは困難である.2型糖尿病患者に画像所見を認めないTolosa-Hunt症候群を経験し,糖尿病性眼筋麻痺とTolosa-Hunt症候群との鑑別点をまとめた.