糖尿病
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53 巻, 6 号
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原著
  • 黒田 暁生, 長井 直子, 小西 祐子, 山崎 美紀子, 白波瀬 景子, 松田 恵里, 金藤 秀明, 坂本 賢哉, 安田 哲行, 安井 洋子 ...
    2010 年 53 巻 6 号 p. 391-395
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    カーボカウントは血糖管理に有用であるが実際の計算法が確立しておらず導入が困難である.食品交換表に基づく食事療法とカーボカウントを融合させて従来の栄養指導の延長として血糖・栄養・体重管理の可能な計算方法の構築を目的とした.食品交換表に準拠した糖尿病15~22単位食1食に含まれる糖質量の簡便な計算法を開発して整合性を検討した.主食以外の糖質量はエネルギー設定にかかわらず1食約20gであり糖質量は主食量で規定されていた.このため主食以外を20g,主食に含まれる糖質量は重量の米飯40%,パン50%,ゆで麺20%と計算して1食の糖質量を算出した.真の糖質量との差は,いずれの単位食でも90%以上の確率で±10g以内に算出できた.食品交換表では副食に含まれる炭水化物量は1日量でエネルギー設定にかかわらず約50gであった.本法により医療従事者,患者ともに容易にカーボカウントが行え,従来の食品交換表を用いた食事指導の延長として有用な方法と考える.
  • 松本 一成, 藤島 圭一郎, 森内 昭江, 最勝寺 弘恵
    2010 年 53 巻 6 号 p. 396-401
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    糖尿病診療ガイドラインに示される治療目標値は,HbA1C 6.5%未満,血圧130/80mmHg未満,LDL-コレステロール(LDL-C)120mg/dl未満である.我々は368例の心血管病の既往がない2型糖尿病患者を平均6年間追跡調査して,心血管イベントの予防効果に対するガイドライン目標値の臨床的有用性について検討した.エンドポイントは心筋梗塞,狭心症,脳梗塞,突然死と設定した.観察期間中に51例が心血管イベントを来たした.イベント発症例は,年齢,収縮期血圧,HbA1C,随時血糖値,LDL-Cが有意に高値であり,HDL-Cが低値であった.ガイドラインの達成率は,HbA1C 6.5%未満がイベントの有無でそれぞれ27.5%と45.4%であった(p<0.05).同様に血圧130/80mmHg未満は15.7% vs. 42.0%(p<0.01)であった.LDL-C 120mg/dl未満は68.6% vs. 70.3%で有意差を認めなかった.ガイドラインの目標値を, 1)0または1項目達成, 2)2項目達成, 3)3項目とも達成の3群に分類してKaplan-Meier生存分析を行なったところ,群間でイベント発症率に有意差を認めた(p<0.01).相対的なイベント発症率は0または1項目達成例と比較して,2項目達成で64.4%減少し,3項目達成では79.9%減少した.同様の結果はCox比例ハザードモデルからも得られた(ハザード比の減少率はそれぞれ68.7%および82.6%).以上のことから,心血管イベントの発症者はガイドラインの目標値達成率が低いことが示唆された.そして,糖尿病診療ガイドライン目標値は,2項目以上達成できれば,心血管イベントを抑制できる可能性が高まると思われた.
症例報告
  • 小林 秀俊, 太田 明雄, 川田 剛裕, 加藤 浩之, 古川 健太郎, 方波見 卓行, 田中 逸
    2010 年 53 巻 6 号 p. 402-405
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.糖尿病歴約8年でGlibenclamide 2.5mgの内服によりHbA1c 6%台で経過していた.平成17年末に左眼窩部痛と同側の動眼神経麻痺が出現し,Tolosa-Hunt症候群と診断されステロイドパルス療法により改善した.その後も血糖コントロールの増悪は認めていなかった.平成20年2月20日,右側の眼窩部痛と動眼神経麻痺が出現し入院した.MRIでは眼窩部ほか頭蓋内病変は認められなかったが,ステロイドパルス療法により症状の改善を認め臨床症状と合わせて対側に生じたTolosa-Hunt症候群と診断した.Tolosa-Hunt症候群の原因は未だ明らかでなく,画像所見が認めなければステロイド治療前に糖尿病眼筋麻痺と鑑別することは困難である.2型糖尿病患者に画像所見を認めないTolosa-Hunt症候群を経験し,糖尿病性眼筋麻痺とTolosa-Hunt症候群との鑑別点をまとめた.
  • 加島 尋, 日高 周次, 近藤 誠哉, 明石 光伸, 吉村 充弘, 川畑 由美子, 池上 博司, 吉松 博信
    2010 年 53 巻 6 号 p. 406-418
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    症例1は48歳,女性(症例2の母親).45歳頃より口渇,体重減少が出現し,3年間で約16kgの体重減少を認めた.2006年4月,陰部皮下膿瘍を生じたために当院形成外科を受診.随時血糖値397mg/dl, HbA1c 14.2%を指摘され糖尿病科を受診し,グリメピリド2mg/日,メトホルミン500mg/日による治療を開始された.しかし,経口血糖降下薬に対する反応性が不良なため,同年5月,血糖コントロール目的で入院となった.空腹時血中CPRは0.99ng/mlと内因性インスリン分泌は比較的保たれていたが,グルカゴン負荷試験でΔCPR5は0.67とインスリン追加分泌障害を認め,抗GAD抗体が陽性であり,緩徐進行1型糖尿病と診断した.症例2は20歳,男性.2007年4月頃に母親(症例1)の血糖測定器で血糖値を測定したところ,血糖値199mg/dlであった.同年9月下旬頃より口渇,多飲,多尿などが出現するようになり血糖値を測定したところ,400mg/dl以上が記録されるようになり,同年10月近医を受診した.血糖値549mg/dl,尿ケトン体(3+)のため,糖尿病性ケトアシドーシスを疑われて,当院紹介入院となった.入院時の随時血糖値は262 mg/dl, HbA1cは9.1%であった.尿ケトン体(4+)とケトーシスは認めたが,動脈血液ガス分析では代謝性アシドーシスは認めなかった.入院時の空腹時血中CPRは0.33ng/mlと内因性インスリン分泌の低下を認め, ΔCPR5 0.07と追加分泌障害も認めた. 抗GAD抗体,抗IA-2抗体ともに陽性であり,急性発症1型糖尿病と診断した.本邦において,1型糖尿病の親子発症例は極めて稀であるために報告する.
  • 田村 加代子, 中園 英里, 佐々木 由紀子, 石岡 加代子, 藤井 仁美, 箱木 まゆみ, 徳永 礼子, 渡邊 祐子, 宮川 高一
    2010 年 53 巻 6 号 p. 419-422
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    定期通院インスリン療法患者のうち血糖自己測定(以下「SMBG」と略す)実施者112名にインタビュー調査を行い,その中から特徴的な問題症例を抽出した.それらは,電極包装の開けにくさ,キャリブレーション忘れ,採取血液量の過少,点着時間に間に合わない,電池切れ,電極挿入部を消毒していたなどであった.測定電極の扱い方,穿刺方法など教育の際にSMBGの原理を理解できる指導が必要と思われた.SMBG機の簡便性,性能などのモニターという点では,個別の問題に合わせたパンフレットの作製やメーカー「相談窓口」と医療機関の連携などが必要と考えられた.その他患者の個別性に合わせた,導入時にとどまらない時宜を得た技術指導,さらには継続的な,患者の測定値を治療に活かすコミュニケーションや教育技術が必要と考えられた.
  • 吉田 彩子, 浦上 達彦, 鈴木 潤一, 齋藤 宏, 和田 美夏, 高橋 昌里, 麦島 秀雄, 依藤 亨
    2010 年 53 巻 6 号 p. 423-427
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    学校検尿による糖尿病検診で,児は9歳時,母親は10歳時に耐糖能異常と診断された.両症例共に若年発症で,肥満を認めず,膵島自己抗体は陰性であった.家族歴が濃厚であったため,maturity-onset diabetes of the young(以下MODY)に関する遺伝子解析を行ったところ,両症例共にグルコキナーゼのGly 299Arg(c.895 G>C)のミスセンス変異を認め,MODY 2と診断した.当初は両症例共に食事・運動療法で治療されていたが,HbA1cの上昇を認めたためにglimepirideの内服を開始し,血糖コントロールの改善を認めた.本邦におけるMODY 2の頻度はMODYの中でも1~2%と希少であるとされるが,糖尿病の家族歴が濃厚な症例では,MODY全般にわたり遺伝子解析を行う意義があると考えられた.一方,MODY 2の大半の症例は食事・運動療法で血糖コントロールが可能だが,経過に伴い血糖値が上昇する症例には,スルホニル尿素薬の使用が有用であると思われた.
  • 山崎 夕, 岩田 実, 鈴木 ひかり, 剣持 敬, 薄井 勲, 山崎 勝也, 浦風 雅春, 小林 正, 戸邉 一之
    2010 年 53 巻 6 号 p. 428-432
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    1型糖尿病の経過中に生体膵腎同時移植を受けた2症例を経験したので報告する.症例1は39歳女性,18歳時発症の1型糖尿病であり,HbA1c 9-10%と血糖コントロールは不良で低血糖発作が頻回であった.糖尿病腎症が進行し,2004年1月血液透析導入となった.同年6月千葉東病院にて父親をドナーとした国内2例目の生体膵腎同時移植を受けた.症例2は32歳女性,11歳時発症の1型糖尿病であり,20歳頃よりインスリン自己中断による糖尿病性ケトアシドーシスを繰り返していた.血糖コントロールもHbA1c 10-12%と不良であり,腎症4期など,細小血管合併症は進行していた.2006年7月同病院にて母親をドナーとする,国内初のABO不適合生体膵腎同時移植を受けた.2症例とも術後2-3年経過するが,長年悩まされてきた頻回なるインスリン治療や低血糖発作から解放され,また,合併症も改善してきている.
  • 雛元 紀和, 中塔 辰明, 平櫛 恵太, 渡辺 恭子, 川村 望, 畑中 崇志, 林 正典, 糸島 達也
    2010 年 53 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.入院1ヶ月前より腰背部痛があり,入院21日前に背部の指圧を受けた.入院10日前より発熱・食欲不振が持続し,入院2日前に近医受診し,高血糖,白血球増加,白血球尿を認めた.糖尿病,腎盂腎炎と診断され当院紹介となった.過去の糖尿病歴はなかった.入院時,発熱,左腰部痛,白血球尿を認め,白血球数2.8×104l, CRP 20.6mg/dl,血糖509mg/dl, HbA1C 12.4%であった.急性腎盂腎炎と診断し,抗生剤(MEPM)投与を開始した.血液検査所見は改善したが,第5病日に腰背部痛が悪化し臥床困難となった.頚胸椎CT・MRIで左脊柱起立筋に膿瘍を認め,第7病日に膿瘍ドレナージを施行し,以後3週間の経過で解熱,全身状態の改善を認めた.化膿性筋炎は,診断・治療が遅れると重篤な全身性の病変にも進展する疾患であり,積極的に疑うことが重要である.指圧後に発症している点も注目すべき病態と思われ文献的考察を加えて報告する.
委員会報告
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