糖尿病
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症例報告
母親が緩徐進行1型糖尿病,息子が急性発症1型糖尿病を発症した1親子例―日本における家族内発症1型糖尿病の臨床像についての検討―
加島 尋日高 周次近藤 誠哉明石 光伸吉村 充弘川畑 由美子池上 博司吉松 博信
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キーワード: 1型糖尿病, 家族内発症, HLA
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2010 年 53 巻 6 号 p. 406-418

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抄録

症例1は48歳,女性(症例2の母親).45歳頃より口渇,体重減少が出現し,3年間で約16kgの体重減少を認めた.2006年4月,陰部皮下膿瘍を生じたために当院形成外科を受診.随時血糖値397mg/dl, HbA1c 14.2%を指摘され糖尿病科を受診し,グリメピリド2mg/日,メトホルミン500mg/日による治療を開始された.しかし,経口血糖降下薬に対する反応性が不良なため,同年5月,血糖コントロール目的で入院となった.空腹時血中CPRは0.99ng/mlと内因性インスリン分泌は比較的保たれていたが,グルカゴン負荷試験でΔCPR5は0.67とインスリン追加分泌障害を認め,抗GAD抗体が陽性であり,緩徐進行1型糖尿病と診断した.症例2は20歳,男性.2007年4月頃に母親(症例1)の血糖測定器で血糖値を測定したところ,血糖値199mg/dlであった.同年9月下旬頃より口渇,多飲,多尿などが出現するようになり血糖値を測定したところ,400mg/dl以上が記録されるようになり,同年10月近医を受診した.血糖値549mg/dl,尿ケトン体(3+)のため,糖尿病性ケトアシドーシスを疑われて,当院紹介入院となった.入院時の随時血糖値は262 mg/dl, HbA1cは9.1%であった.尿ケトン体(4+)とケトーシスは認めたが,動脈血液ガス分析では代謝性アシドーシスは認めなかった.入院時の空腹時血中CPRは0.33ng/mlと内因性インスリン分泌の低下を認め, ΔCPR5 0.07と追加分泌障害も認めた. 抗GAD抗体,抗IA-2抗体ともに陽性であり,急性発症1型糖尿病と診断した.本邦において,1型糖尿病の親子発症例は極めて稀であるために報告する.

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© 2010 一般社団法人 日本糖尿病学会
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