抄録
1型糖尿病の経過中に生体膵腎同時移植を受けた2症例を経験したので報告する.症例1は39歳女性,18歳時発症の1型糖尿病であり,HbA1c 9-10%と血糖コントロールは不良で低血糖発作が頻回であった.糖尿病腎症が進行し,2004年1月血液透析導入となった.同年6月千葉東病院にて父親をドナーとした国内2例目の生体膵腎同時移植を受けた.症例2は32歳女性,11歳時発症の1型糖尿病であり,20歳頃よりインスリン自己中断による糖尿病性ケトアシドーシスを繰り返していた.血糖コントロールもHbA1c 10-12%と不良であり,腎症4期など,細小血管合併症は進行していた.2006年7月同病院にて母親をドナーとする,国内初のABO不適合生体膵腎同時移植を受けた.2症例とも術後2-3年経過するが,長年悩まされてきた頻回なるインスリン治療や低血糖発作から解放され,また,合併症も改善してきている.