抄録
学校検尿による糖尿病検診で,児は9歳時,母親は10歳時に耐糖能異常と診断された.両症例共に若年発症で,肥満を認めず,膵島自己抗体は陰性であった.家族歴が濃厚であったため,maturity-onset diabetes of the young(以下MODY)に関する遺伝子解析を行ったところ,両症例共にグルコキナーゼのGly 299Arg(c.895 G>C)のミスセンス変異を認め,MODY 2と診断した.当初は両症例共に食事・運動療法で治療されていたが,HbA1cの上昇を認めたためにglimepirideの内服を開始し,血糖コントロールの改善を認めた.本邦におけるMODY 2の頻度はMODYの中でも1~2%と希少であるとされるが,糖尿病の家族歴が濃厚な症例では,MODY全般にわたり遺伝子解析を行う意義があると考えられた.一方,MODY 2の大半の症例は食事・運動療法で血糖コントロールが可能だが,経過に伴い血糖値が上昇する症例には,スルホニル尿素薬の使用が有用であると思われた.