抄録
症例は57歳,男性.20歳台より高血圧,30歳台より糖尿病の内服治療を行っていたが,2009年4月以降,自己中断していた.同年10月7日意識障害にて当院に救急搬送された.血圧250/158mmHgと重症高血圧を呈し,頭部MRIにてT2強調画像及びFLAIR画像で橋を中心とした脳幹部に高信号域を認め,reversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)と診断した.RPLSは,高血圧脳症や子癇,抗癌剤投与,免疫抑制剤投与などによって頭痛・意識障害・痙攣・視力障害などを発症し,大脳半球後部,脳幹部,小脳などの椎骨脳底動脈系に広範な白質病変を呈する脳症をまとめた概念である.病変が脳幹部に限局することは稀で,brain stem variant of RPLSと呼ばれる.本症例は降圧治療を中心とした保存的加療により意識レベルの改善,視力を含めた神経学的所見の改善が得られ,特に後遺症は残さなかった.