抄録
症例は63歳男性,主訴は下痢と嘔吐.1987年より2型糖尿病にて治療開始され,2001年7月に微量アルブミン尿と血清クレアチニン(Cr)値の軽度上昇を認めたが,糖尿病性神経障害と網膜症が存在したために糖尿病性腎症による腎機能低下と診断されていた.2002年5月下旬より嘔吐と下痢が出現し,血清Cr値が5.6 mg/dlと上昇したため当院紹介となり,精査加療目的にて入院となった.臨床経過と尿所見で糸球体腎炎の存在が疑われたことから腎生検を施行したところ,糖尿病性腎症に合併した抗糸球体基底膜(glomerular basement membrane,以下GBM)抗体による急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis,以下RPGN)であることが判明.ステロイドパルス療法も考慮したが日本腎臓学会の診療指針では既に適応外であり1),血液透析へと移行し維持透析となった.糖尿病患者における腎生検の適応を考える意味でも貴重な症例と考え報告する.