抄録
尿管自然破裂を合併したmaturity-onset of the diabetes of the young(MODY)5の1例を経験した.症例は20歳男性.腹部の外傷・手術の既往なし.家族歴に糖尿病なし.2010年4月より口渇があり,以後,体重の減少がみられた.8月13日より突然,右側腹部痛が出現し,持続するため8月18日近医を受診した.腹部造影CT検査にて右腎周囲に多量の尿貯留像を認め,右腎盂破裂が疑われ,同時に,随時血糖1430 mg/dl, HbA1c 14.9 %(NGSP値),尿ケトン1+を認めたため,同日当院救命救急センターに搬送となった.糖尿病,右尿管自然破裂と診断し,高血糖に対して補液およびインスリンの持続静注を行い,尿管破裂には尿管ステントが留置された.右腎周囲の尿の漏出は消失したが,右腎実質の菲薄化を認めた.若年発症の糖尿病で,原因不明の尿管自然破裂,多発性腎嚢胞の存在より,MODY 5を疑い,遺伝子解析を施行した結果,17番染色体においてhepatocyte nuclear factor(HNF)-1β遺伝子を含む1.3 Mb領域の片アリル欠損を示し,MODY 5の診断に至った.