2013 年 56 巻 2 号 p. 93-101
飲水を好み清涼飲料水の多飲が常習化していた若年男性が糖尿病ケトアシドーシス(DKA)として急性発症しながら,代謝性アルカローシスも合併し,結果としてアルカリ血症だった症例を経験した.低血圧で低K血症,低Mg血症があり,尿中Cl再吸収試験にてGitelman又は3型Bartter症候群と同様の尿細管機能異常を認めたが,両者の原因遺伝子に異常を認めなかった.高血糖解除後も内因性インスリン分泌は低下しており,腹部CTにて膵体尾部欠損および左腎盂の拡大を認め,Maturity onset diabetes of the young(MODY)5を疑い遺伝子検索したところ17番染色体のHepatocyte nuclear factor-1β(HNF-1β)遺伝子を含む約1.3 MB領域の片アリル欠損を認めた.糖尿病および腎・泌尿器系疾患の家族歴はなくMODY 5の孤発例と診断した.HNF-1β遺伝子は尿細管の発生に関与し,変異によりMODY 5以外に低K血症,低Mg血症,低Ca尿症をきたす症例はあるが,清涼飲料水多飲の病歴があり,発症時にアルカリ血症を伴うDKAであったMODY 5症例は既報告がなく,報告する.