2014 年 57 巻 11 号 p. 843-847
症例は71歳女性.40歳で糖尿病と診断され,近医で経口血糖降下薬による治療を受けていたが血糖コントロールは不良で,2014年4月よりイプラグリフロジン50 mgが追加された.以後,強い口渇を自覚し,投与後9日目に小脳・脳幹梗塞を発症して入院した.血糖値は219 mg/dl, HbA1c 9.8 %であり,ヘモグロビン13.4 g/dl(3月には,11.0 g/dl),ヘマトクリット40.6 %(同35.3 %)より,脱水が示唆された.心電図では虚血所見があり,ABIは0.85/0.76と低値で,超音波検査で両側の前脛骨~後脛骨動脈に狭窄・閉塞がみられた.同薬を中止し,エダラボンと濃グリセリンの投与,インスリン治療を行い,軽快退院した.本例は高齢,非肥満,利尿薬併用の糖尿病で,脱水により脳梗塞を発症したと推察された.同薬の投与前に,動脈硬化のスクリーニングを行うことが望ましい.