2014 年 57 巻 6 号 p. 431-437
症例は55歳女性.35歳時に洞不全症候群と診断されペースメーカーを装着,44歳で2型糖尿病と診断された.食事療法と経口剤で治療されていたが,徐々にコントロールが悪化した.2012年2月に腹痛,嘔吐が出現して当院を受診,腹部X線にてイレウスと診断した.CTにて,多脾症,肝部下大静脈欠損,両側二葉の対称肺,膵体尾部形成不全と判明し,膵体積は健常人の約50 %と算出された.インスリン分泌は高度に低下しており,膵体尾部形成不全が糖尿病の原因であったことが判明した.強化インスリン療法の導入でコントロールは良好となった.多脾症は非常に稀な疾患で,先天性心疾患や内臓奇形を合併し,重篤な心疾患のない5-10 %のみが成人できるとされる.本症例は糖尿病の診断後10年を経て,多脾症に伴う膵体尾部形成不全が発見された症例である.糖尿病患者の診療にあたっては,画像診断も含めた総合的な検索が必要であることを示唆する症例であった.