抄録
糖尿病患者においては冠動脈疾患の合併頻度が高く,生命予後を左右するために,早期の的確な診断が期待される.糖尿病では無症候性心筋虚血のために自覚症状が乏しく,診断時に高度に進行した病変を示す患者も少なくない.今回,我々は,合併症の精査目的に入院をした159例の無症候性糖尿病患者に対して320列冠動脈CTによる冠動脈疾患のスクリーニングを実施した.その結果,67例(42 %)に有意狭窄を認め,循環器内科医による追加検査によって20例(13 %)が虚血を有する冠動脈疾患と診断された.虚血を有する冠動脈疾患と診断された患者では,腎症の合併,降圧薬の使用,抗血小板薬あるいは抗凝固薬の使用,脳梗塞の既往が多かった.またeGFRは有意に低く,ABI,IMTにも有意な差異を認め,石灰化スコアも高値であった.