糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
症例報告
顎口腔領域感染により顎顔面膿瘍を発症した糖尿病患者3症例の検討
吉原 彩安田 睦子廣井 直樹南雲 彩子杉山 あや子毒島 保信松崎 英雄薬師寺 史厚
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 60 巻 4 号 p. 314-320

詳細
抄録

糖尿病患者は,感染症に罹患すると,急速に進行し重症化・難治化しやすい.糖尿病診療において,尿路感染や下肢壊疽,下気道感染の重症例にしばしば遭遇するが,忘れてはならない感染症として,顎口腔領域の感染がある.歯周病やその他の口腔内の炎症から,顎骨骨髄炎を発症し広範囲の膿瘍を形成し,重篤になる場合がある.今回我々は,無治療の糖尿病患者において歯科治療や下顎の外傷により,急速に顎顔面膿瘍を発症した3症例を経験した.3症例ともに,数日から2週間程度の短期間で急速に膿瘍まで進行したが,適切な血糖コントロールと抗菌薬の投与によって速やかに炎症は改善した.顎口腔領域感染の重症化には,高血糖が大きく影響する.口腔内の損傷や侵襲的な処置を行う際には,軽微な侵襲であっても適切な血糖コントロールを行い,慎重な経過観察によって重症化を予防することが重要であると考える.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top