2018 年 61 巻 10 号 p. 686-693
症例は77歳,女性.X-1年12月頃から口渇,多飲,多尿を自覚した.X年1月中旬から症状が増悪し受診した.尿ケトン(+),随時血糖値582 mg/dL,HbA1c 16.0 %のため入院となった.インスリン療法により血糖値は改善した.インスリン依存状態であったが,患者・家族が退院後のインスリン療法継続を拒否されたため,11病日より経口血糖降下薬へ変更した.経口血糖降下薬は無効であり,さらにIA-2抗体が陽性のため,患者・家族を再度説得し21病日よりインスリン療法を再開した.24病日,左上下肢舞踏病が出現した.MRI T1強調画像で右被殻高信号を認め,糖尿病性舞踏病と診断した.高齢発症1型糖尿病患者に糖尿病性舞踏病を発症した症例は稀であり,短期間に繰り返した血糖変動が糖尿病性舞踏病を誘発した可能性が考えられた.GAD抗体陰性,IA-2抗体陽性の高齢発症1型糖尿病も稀であり,併せて報告する.