2018 年 61 巻 3 号 p. 117-125
糖尿病皮下注射治療例において,視触診では皮下硬結を認めず超音波検査のみで皮下組織変化を検出する「非硬結性変化」を来す報告が散見される.今回我々は,非硬結性変化を有する患者の特徴と血糖変動について検討した.皮下超音波検査で注射部位に皮下組織変化を認めた15例のうち6例(40 %)は非硬結性変化であった.血糖変動の検討では,硬結例においては著明な食後高血糖を認め,非硬結性変化例においても食後の血糖上昇を認めた.実際に,HbA1c高値が持続する一方で突然の低血糖を併発する1型糖尿病症例では,上腹部全域に非硬結性変化を認めた.非硬結性変化への注射を回避したところインスリン必要量は1日146単位から61単位へ減少し,血糖変動の改善を認め低血糖は消失した.視触診に加えて超音波検査を実施することは,非硬結性変化の早期発見や同部位への注射回避を可能とし,血糖コントロールの改善に有用であると考えられる.