2019 年 62 巻 2 号 p. 101-107
症例は76歳女性.2型糖尿病で経口血糖降下剤を多剤(SU剤,ビグアナイド剤,DPP4阻害薬)内服も肥満のため血糖コントロール不良であった.入院7日前より右上肢全体の疼痛が出現し4日前に近医整形外科を受診し鎮痛剤を処方された.同日夜より右上肢の紅色皮疹が出現し当院救急外来受診.薬疹を疑われ鎮痛剤を中止され帰宅.しかし入院3日前より倦怠感,水様下痢が出現,入院当日に立位不能となり,顔面,体幹にも皮疹が出現し救急要請.汎発性帯状疱疹と診断し,アシクロビル経静脈投与で加療を行った.入院時より右上肢の強い疼痛と筋力低下を認め,疼痛は帯状疱疹の軽快に伴い徐々に改善したが,右上肢の筋力低下は残存した.帯状疱疹は高齢糖尿病患者に好発するcommon diseaseであるが,稀に本症例のように汎発性帯状疱疹や運動麻痺などの重篤な合併症を伴うことがあり,日常診療で留意すべきと考え報告する.