2019 年 62 巻 6 号 p. 355-359
症例は54歳女性.43歳より両大腿切断術後状態.50歳で2型糖尿病の診断を受けシタグリプチン,メトホルミンの投与を開始したが,間食による肥満および血糖コントロール増悪傾向を認めた.X年9月にHbA1c 9.6 %となり10月に当科に入院した.身長114.0 cm,体重58.8 kg,両下肢切断状態の標準体重は35.0 kgと算出した.指示エネルギー量はHarris-Benedict式や酸素摂取量を参考とし1200 kcalとした.またシタグリプチンをリラグルチドに変更し,良好な血糖コントロールを得た.外傷性下肢切断術後患者では身体活動低下,摂食量増加,adiposopathyによる体脂肪増加や心血管死リスク増大を来たす.本症では下肢切断を加味したエネルギー量設定,及び食欲・体重増加,心血管イベント抑制のためのリラグルチド使用が有効であった.