2020 年 63 巻 10 号 p. 711-716
症例は2型糖尿病に対して内服治療でHbA1c 6 %前半を推移していた77歳男性.肺扁平上皮癌に対してペムブロリズマブ投与開始5か月後,随時血糖249 mg/dL,尿ケトン体陽性であった.自覚症状はなくインスリン療法は開始されなかった.3日後から倦怠感を自覚し,5日後に意識障害で救急搬送された.糖尿病ケトアシドーシスと診断後,大量補液と速効型インスリンの持続静注を行ったが,17時間後に永眠した.病理組織で膵β細胞やα細胞の減少,CD3陽性T細胞の膵島への浸潤などを認め,劇症1型糖尿病の病理像に合致した.また,膵島でのprogrammed cell death ligand 1の発現低下を認めた.免疫チェックポイント阻害剤使用する場合は,免疫関連副作用である1型糖尿病への早期対応のため,他科診療科や患者への啓発が重要である.