糖尿病
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63 巻, 10 号
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特集
糖尿病診療の指針:ガイドラインとの関わり
原著
社会医学・医療経済学
  • 岩澤 真紀子, 堀井 剛史, 柏木 彩華, 鈴木 絢絵, 小川 顕史, 林 哲範, 厚田 幸一郎
    2020 年 63 巻 10 号 p. 701-710
    発行日: 2020/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    2015年1月から2年7ヶ月間に北里大学病院で経口血糖降下薬単剤が開始されたドラッグナイーブ2型糖尿病患者を対象に処方実態を調査し,メトホルミンを第一選択として腎機能によりシタグリプチンを選択するフローチャートを用いた場合の薬剤選択および薬価に関して比較した.対象患者168名の初回導入薬剤の内訳は,dipeptidyl peptidase-4阻害薬115名,メトホルミン34名,その他19名であった.シミュレーションの結果,メトホルミンへ変更が83名(49.4 %),シタグリプチンへ変更が36名(21.4 %)であった.1ヶ月当たりの薬剤費を比較した結果,DPP-4阻害薬からメトホルミンへの変更例(70名)で-3,454.8円/人,シタグリプチン以外のDPP-4阻害薬からシタグリプチンへの変更例(29名)で-1,148.6円/人であり,フローチャートによる薬剤費削減の可能性が示唆された.

症例報告
  • 向田 幸世, 足立 淳一郎, 大坪 尚也, 松田 祐輔, 冨井 翔平, 笠原 一郎, 神保 江莉加, 福井 智康, 小林 哲郎, 山田 哲也
    2020 年 63 巻 10 号 p. 711-716
    発行日: 2020/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は2型糖尿病に対して内服治療でHbA1c 6 %前半を推移していた77歳男性.肺扁平上皮癌に対してペムブロリズマブ投与開始5か月後,随時血糖249 mg/dL,尿ケトン体陽性であった.自覚症状はなくインスリン療法は開始されなかった.3日後から倦怠感を自覚し,5日後に意識障害で救急搬送された.糖尿病ケトアシドーシスと診断後,大量補液と速効型インスリンの持続静注を行ったが,17時間後に永眠した.病理組織で膵β細胞やα細胞の減少,CD3陽性T細胞の膵島への浸潤などを認め,劇症1型糖尿病の病理像に合致した.また,膵島でのprogrammed cell death ligand 1の発現低下を認めた.免疫チェックポイント阻害剤使用する場合は,免疫関連副作用である1型糖尿病への早期対応のため,他科診療科や患者への啓発が重要である.

  • 佐野 麻美, 淺野 有紀, 越 智通, 西井 裕, 成本 壮一
    2020 年 63 巻 10 号 p. 717-723
    発行日: 2020/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は57歳男性.2ヶ月前から続く口渇,全身倦怠感を主訴に当院を受診.血糖454 mg/dL,HbA1c 14.1 %,動脈血液ガスpH 7.37,尿ケトン2+であり,糖尿病性ケトーシスと診断しインスリンを導入した.CT検査で膵尾部と肝臓に多発する腫瘍を認めた.空腹時グルカゴン442 pg/mLでありグルカゴノーマと考えられた.エベロリムスを開始したが15ヶ月後に間質性肺炎を発症し中止,その後ストレプトゾシンを開始したが腎機能悪化のため中止.他院にて膵体尾部切除+拡大肝切除+脾臓摘出術を施行した.病理診断は膵神経内分泌腫瘍G1,グルカゴン染色陽性であった.糖尿病については退院後インスリン離脱可能となったが,間質性肺炎発症2ヶ月前にインスリン再開,術後は再度離脱可能となった.糖尿病の診断時には二次性糖尿病の存在も念頭におくべきであると考える.

  • 金丸 良徳, 小倉 雅仁, 濱崎 暁洋, 寺本 祐記, 稲垣 暢也
    2020 年 63 巻 10 号 p. 724-731
    発行日: 2020/10/30
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性.62歳時に膵体尾部腫瘤に対し膵体尾部切除術を施行された.腫瘍の病理組織は非機能性内分泌腫瘍で,正常膵組織の膵島構造は保たれ,炎症細胞浸潤は認めなかった.術前検査で,空腹時血糖値97 mg/dL,HbA1c 5.8 %であった.63歳時に空腹時血糖122 mg/dL,HbA1c 6.3 %を認め当科に紹介受診.抗GAD抗体陰性で,空腹時CPR 1.39 ng/mL,HbA1cは6.5 %未満で経過した.A病院に療養入院中に心窩部痛の出現から7日目に意識障害と著明な高血糖(825 mg/dL),HbA1c 6.9 %を認め,インスリン投与が開始された.その後B病院への転院を経て精査加療目的に当院当科に転院となった.内因性インスリン分泌の枯渇と発症経過から劇症1型糖尿病と診断した.劇症1型糖尿病の臨床経過と発症前の膵標本を観察し得た貴重な症例であり,文献的考察を加えて報告する.

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