2020 年 63 巻 7 号 p. 445-450
症例は68歳男性,左下肢の発赤・腫脹を認め外来を受診した.蜂窩織炎の診断で抗生剤投与を行い症状は改善したが,その後も同部位の蜂窩織炎を再発し,入院加療を要した.入院時の随時血糖値が341 mg/dLと高値であったが,イオン交換高速液体クロマトグラフィ(High performance liquid chromatography,以下HPLC)法による自動ヘモグロビン分析でHbA1cは4.3 %と乖離を認めた.遺伝子解析により異常ヘモグロビンHbE-Saskatoon[β22 Glu(GAA)→Lys(AAA)]と同定され,HPLC法の測定でHbA1cが偽低値を示していると考えた.以後グリコアルブミン値・血糖値を指標に糖尿病治療を行い,現在も経過良好である.血糖値とHbA1c値の乖離から本邦では稀なHbE-Saskatoonを同定し得た.適切な血糖コントロールを行うことで,感染症治療に対し良好な転帰を得ることが出来た症例を経験したため報告する.