2020 年 63 巻 8 号 p. 521-527
72歳男性.70歳時に肺癌の診断となり,ペンブロリズマブ投与開始後76週に下痢,食欲不振,体動困難のために入院となった.入院時血糖88 mg/dL,HbA1c 6.4 %だったが,入院後4日目に血糖468 mg/dL,Cペプチド0.07 ng/mLと急峻な血糖上昇,インスリン分泌枯渇から1型糖尿病と診断した.また好酸球増多,ACTH及びコルチゾール低下を認め,負荷試験の結果,ACTH単独欠損に伴う副腎不全と診断した.診断時ケトーシスなく劇症1型糖尿病の診断基準は満たさなかったが,副腎不全がケトン産生の抑制に影響した可能性も考慮された.ペンブロリズマブの副作用に1型糖尿病,副腎不全があるが,本症例は同時期発症,診断に至った初の報告である.副腎不全により血糖上昇の顕在化が遅れた可能性もあり,検査や症状の把握に関して一層の注意喚起を要すると考えられた.