2020 年 63 巻 8 号 p. 539-546
症例1:46歳 男性,3年前に2型糖尿病を指摘されるも,治療を自己中断していた.口喝と倦怠感にて当院を受診し,HbA1c 14.2 %と高値に加え発熱・炎症反応上昇を認め入院となった.血液培養より黄色ブドウ球菌が検出され,造影CTにて前立腺・肺・大腿筋に膿瘍を認めた.抗菌薬投与と前立腺膿瘍穿刺にて膿瘍腔は消失し,血糖値は強化インスリン療法で改善した.症例2:64歳 男性,罹病歴25年の糖尿病あり,強化インスリン療法で加療中もHbA1c 13.4 %と高値であった.膿尿で前医入院となり,血液培養で黄色ブドウ球菌が検出された.セファゾリン投与が開始され,継続加療目的で当院へ転院となった.造影CTにて前立腺・股関節に膿瘍を認め,抗菌薬投与のみで改善した.前立腺膿瘍は糖尿病患者にまれに生じる疾患だが特異的な症状に乏しく,菌血症から全身に播種性病変を来たすことがあり注意が必要と考えられる.