2021 年 64 巻 12 号 p. 577-585
1型糖尿病は肉体的・精神的負担に加え,経済的負担も大きい疾患である.成人1型糖尿病の経済支援策として,身体障害者福祉法が浮上した.そこで1型糖尿病による経済/社会的影響を明らかにする目的で成人患者183名にアンケート調査を行った.生活機能制限の側面からの評価では,対象者のうち98.4 %が期待される社会生活をほぼ達成していた.一方で,1型糖尿病が就学,就労,QOL,経済的負担へ与える影響は小さくなかった.半数以上が治療内容に経済的負担が影響している可能性があると回答し,合併症の進行が懸念された.利用経験のある福祉制度等は障害年金制度が最多であったが,その受給は1割に留まり,現行の経済支援制度は万全ではないことが示唆され,1型糖尿病を対象とした更なる経済支援策の検討が必要と考えられた.