糖尿病
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症例報告
外来性インスリンに誘発されたインスリン抗体の性質変化を長期ステロイド治療中に観察した2型糖尿病の1例
川住 宗生城山 枝里吉井 陽子久保田 益亘
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2022 年 65 巻 11 号 p. 595-602

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抄録

症例は62歳男性.61歳時2型糖尿病と診断され,血糖管理不良のためインスリン治療が導入された.62歳時肺炎にて入院した際,中止していたインスリン治療を再開したが,低血糖が頻回に出現し,不安定な血糖変動の原因としてインスリン抗体陽性が判明した.ブタインスリンを抗原にしたScatchard解析にて,インスリン抗体は高結合部位数,低親和性を示した.インスリンを中止,ステロイド投与を開始して低血糖症状は改善した.5年9ヶ月に亘るScatchard解析にて抗体の性質変化を観察し,ステロイド開始にて抗体の性質が改善し,中断後には抗体の性質が悪化することを確認した.本例ではステロイドの使用がインスリン抗体の性質改善に寄与したが,長期に亘るステロイド治療を行っても抗体の性質改善は充分ではなかった.しかしながら,少量のステロイドの継続投与により低血糖頻度を減らすことが可能であった.

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© 2022 一般社団法人 日本糖尿病学会
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