糖尿病
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症例報告
Dulaglutideが奏効した糖尿病合併高インスリン血性低血糖症の1例
和田 あゆみ近藤 剛史清水 一麿小松 真貴子岩﨑 優村上 尚嗣金崎 淑子新谷 保実
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2022 年 65 巻 12 号 p. 680-685

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抄録

患者は50歳代,女性.20歳代から低血糖発作を反復し,7年前に反応性低血糖と診断.1年前に15 kgの体重増加(BMI 26.0 kg/m2)とともに糖尿病を指摘され(HbA1c 9.3 %),当科に入院.血糖コントロールは改善したが,2ヶ月前より30~40 mg/dLの低血糖を頻発し,当科に再紹介.BMI 22.8 kg/m2,HbA1c 5.9 %,低血糖の原因となる服薬なく,インスリン抗体は陰性.副腎不全はなく,造影CTで膵に腫瘍性病変なし.75 g-OGTTでの血漿血糖(PG)(mg/dL)/インスリン(IRI)(μU/mL)は,前:94/9.1,120分:209/545と負荷後に著明な高インスリン血症が惹起され,5時間後に血糖46 mg/dLまで低下.絶食試験は陰性であったが,72時間後のPG 50/IRI 2.1で,グルカゴン負荷後のΔPG 17 mg/dL.選択的動脈内カルシウム注入試験では,上腸間膜動脈でIRIの2倍以上の増加(8.6→17.7 μU/mL)が認められ,non-insulinoma pancreatogenous hypoglycemia syndrome(NIPHS)の病態と考えられた.GLP-1受容体作動薬であるDulaglutideを開始したところ,血糖変動は速やかに平坦化し,低血糖発作は消失した.DulaglutideによるNIPHSの治療例は報告されておらず,稀な高インスリン血性低血糖症として報告する.

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© 2022 一般社団法人 日本糖尿病学会
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