2023 年 66 巻 1 号 p. 18-25
症例1は38歳男性.31歳時にHIV感染症と診断され抗HIV療法(以下ARTと略す)開始.ART開始29ヶ月後にGAD抗体(RIA法)7.2 U/mLと陽転化し,ART開始78ヶ月後に1型糖尿病と診断.症例2は64歳男性.63歳時にHIV感染症と診断されART開始.ART開始15ヶ月後にGAD抗体(ELISA法)12.5 U/mLと陽転化し,1型糖尿病と診断.症例3は53歳男性.40歳時にHIV感染症と診断されART開始.ART開始13年後にGAD抗体(ELISA法)18 U/mLと陽転化し,1型糖尿病と診断.既報の症例を含めた9症例につき考察した結果,ART開始後の1型糖尿病発症には,先行するウイルス感染,膵β細胞の小胞体ストレスにつながる環境因子,2型糖尿病との関連が指摘される抗HIV薬の使用,一般的な1型糖尿病の疾患感受性ハプロタイプの保有が関与する可能性が示唆されたため報告する.