2023 年 66 巻 5 号 p. 333-338
69歳男性.2型糖尿病でインスリン治療中に肺腺癌と診断され,3年前よりニボルマブで治療を開始した.ニボルマブでの治療中にインスリン必要量が徐々に増大し,血糖コントロールは悪化していた.59コース後より食思不振と倦怠感が出現,糖尿病ケトアシドーシスの診断で入院となった.入院後の精査でインスリン分泌は枯渇していたものの,膵島関連自己抗体は陰性であった.画像検査ではニボルマブ投与前と比較して,著明な膵萎縮を認めた.近年,免疫チェックポイント阻害薬投与中に進行性の膵臓容積減少を認めるケースの報告が散見される.治療中の膵臓容積減少は,糖尿病の新規発症のみならず,2型糖尿病の増悪・インスリン依存状態への進行を示唆する所見である可能性があり,インスリン分泌能の変化に注意を払いつつ経過観察する必要がある.