2023 年 66 巻 5 号 p. 339-347
症例は61歳の男性.41歳から糖尿病,肥満と診断され,加療を受けていた.48歳で糖尿病性ケトアシドーシスを発症し,当科に入院,サブクリニカルクッシング症候群を伴うACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(primary bilateral macronodular adrenal hyperplasia,PBMAH)と診断した.その後,両側甲状腺乳頭癌を発症したため,PBMAHの主要責任遺伝子の一つであるARMC5の変異を末梢血で検討し,ヘテロ接合体変異[c.1855C>T(p.R619*)]を確認した.糖尿病治療はリラグルチドと強化インスリン療法を併用し,HbA1c 6~7 %台を推移したが,61歳時に原発性膵癌を併発,死去した.PBMAH,糖尿病では腫瘍発生リスクが増加し,PBMAHでの耐糖能異常合併率も高いことから,併存例ではより厳格な腫瘍のスクリーニングを行うべきと考えられる.