糖尿病
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糖尿病患者における血清Carboxypeptidase A活性に関する研究
第1報Carboxypeptidase A活性測定の意義について
藤井 暁西本 儀正佐治 哲文関 淳一和田 正久奥田 清
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1974 年 17 巻 2 号 p. 119-125

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抄録

carboxypeptidaseが膵臓内に高濃度に存在する事実に着目して2, 3の異なる病型の糖尿病患者について血清carboxypeptidase A活性 (以下CPase) を奥田らの方法を用いて測定し, 病歴, コントロール状態, 血清IRIなどとの関連について若干の検討を加えた. (1) 対象各群のCPase (mean±SE) は, 健常者 (21例) 289.2±3.8単位, 耐糖能異常を有する膵癌 (8例) 182.9±6.0単位, 肝硬変を合併した糖尿病 (12例) 210.8±11.6単位, 若年型糖尿病 (14例) 並びに成人型糖尿病 (25例) では各々248.0±22.8単位, 257.6±6.5単位であった. (2) 一次性糖尿病 (若年型ないし成人型糖尿病) 患者においてはCPaseと罹病期との間には一定の関係を認めなかった. しかしCPaseが著明に低値を示したのはいずれも罹病期間が10年以上の長期に亘り, かつコントロール不良の症例であった. (3) 一次性糖尿病においてコントロール良好の者ではCPaseが著明に低値を示す症例がなかったのに対し, 耐糖能異常を示す膵癌患者, 肝硬変を合併する糖尿病患者では糖代謝異常が比較的よくコントロールされている症例の中にもCPaseが著明な低値を示すものがみられた. (4) 一次性糖尿病においてCPaseと空腹時血清IRIとの間には一定の関係は認められなかった. 以上CPaseの測定が糖尿病患者について経過を観察する上で病歴やコントロール状態などとの関連において膵病変の存在を見逃さないための有用な検査手段の一つとなりうる可能性を示唆した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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