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14CacetateをPrecursorとしたrat脂肪組織の
in vitroにおける脂酸合成において, 10例ずつの肝硬変および成人型糖尿病患者血清中における脂酸合成を, bufferならびに正常人血清中におけるそれと対比し, またそれらに対する60および600μU/m
lの添加insulinの作用が各一血清によっていかなる影響をうけるかを検討した.
14Cのとりこみを総脂酸としてみると, insulin非添加と60μU/m
l添加時, 両疾患, とくに肝硬変血清では正常血清に比しとりこみが抑制され, 600μU/m
l添加時は3血清ともbufferに比し20%以上の抑制がみられた. これをさらに個々の脂酸の動きでみると, 重要なものとして16: 0の両疾患血清での
14C%分布値は, insulin非添加および60μU/m
l添加時, 正常血清に比し減少傾向にあり, この脂酸の
14C%分布値が総脂酸の
14Cの50~60%を占めることから16: 0の合成障害が総脂酸の変化に最も大きく反映する. また600μU/m
lのinsulin添加時, 両疾患血清における18: 1の
14C%分布値は, 正常血清に比し著明に減少しており, これら両脂酸の合成がinsulinの作用と密接に関係することや, これらの患者血清中の内凶性IRIが正常人血清に比し高値であることから, 肝硬変および糖尿病患者血清における16: 0や18: 1の合成阻害はすなわちmalonyl CoA経路の脂酸合成や不胞和化反応に対するinsulinによる促進効果の抑制を意味するものと考えられる.
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