糖尿病
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糖尿病における血清脂質
第1報血管障害との関係について
佐々木 陽堀内 成人北村 次男中川 史子乾 久朗
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1974 年 17 巻 5 号 p. 402-411

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抄録

糖尿病における脂質代謝異常ならびにその血管障害への影響について検討した. 対象は, 大阪成人病センターを受診した糖尿病例 (DM) 715名で, また対照として人間ドック受診者中の糖代謝正常例 (nORM) 573名, 境界例 (BDL) 1,095名を選んだ。
DM群はBDL群, nORM群に比し, コレステロールの高値を示すものが多く, とくに女に多い. 一方, トリグリセライド値もDM群とくに男に高値を示すものが多くみられた.
高コレステロール血症は男女とも肥満との関係が明らかであるが, 血管障害との関係は顕著ではなく, わずかに冠硬化群にコレステロール高値を示すものが多くみられたに過ぎない. また高トリグリセライド血症も肥満との関係がみられるのみで, 血管障害との関係は全くみられなかった.
偏相関分析の結果, コレステロール値は性別と肥満, トリグリセライド値は肥満との間にそれぞれ有意の正の相関がみられたが, コレステロール値と心電図スコア (冠硬化) との関係は有意でなかった. また主成分分析の結果, 血管障害と高血圧との関係が著明であること, コレステロールとトリグセライドはともに肥満と関連するが, 両脂質はかなり離れて位置づけされることなどが見出された。
以上の検討の結果から, わが国の糖尿病の血管障害は高血圧性変化が主流をなし, 脂質代謝異常の影響は少ないと考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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