糖尿病
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糖尿病における血清脂質
第2報都市と農村の住民の血清脂質の比較
佐々木 陽堀内 成人鈴木 隆一郎乾 久朗
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1974 年 17 巻 5 号 p. 412-419

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抄録

血清脂質レベルが地域的条件に大きく影響されることに着目し, 糖尿病における脂質代謝異常ならびに血管障害と地域差との関係について検討した. 対象は大阪府下の農山村の住民237名と大阪市および近郊の居住者2,383名である.
血清コレステロール値は, 男女とも都市居住者に高値で, 都市, 農村とも女に高値を示すものが多い. しかし, 血清トリグリセライド値は, 男では都市の方が高値であるが, 女では逆に農村の方が高値であった.
血管障害の頻度は, 高血圧は農村に高率であるが, 冠硬化は圧倒的に都市に高率である。この成績と前述の結果と照らし合わせると, 冠硬化とコレステロールとの関係は示唆されるが, トリグリセライドとの関係はむしろ否定的である。
農村の対象について相関分析を行うと, 鷲レステロール値はGTT空腹時値, またトリグリセライド値は肥満とGTT空腹時値と相関するが, ともに心電図スコア (冠硬化) と関係は見られなかった.
また主成分分析の結果によると, 心電図スコアは高血圧性変化との関係が密接で, 脂質代謝, とくにトリグリセライドとの関係はほとんどみられなかった.
以上の結果から, 糖尿病の場合においても脂質代謝は地域的な条件に影響されることが極めて大きく, 糖代論異常は単にこれを修飾するにすぎないといえる. また脂質代謝異常の血管障害に対する影響も明らかでなかった。

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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