1974 年 17 巻 5 号 p. 442-449
糖尿病合併症としての皮膚病変のうち, 血管病変に起因すると思われるものは, 動脈硬化性と考えられるものと糖尿病性細小血管症によると考えられるものとに大きく分けられるが, 我々は最近後者に属するとされるBullosis diabeticorumの1例を経験したので報告する.
患者は45歳の男子で, 33歳に糖尿病を発症して後, 不十分な治療を続け, 頭部癖症の治療および糖尿病のコントロールを目的として入院した, 入院後, 右下肢および左下肢に1回ずつ特別な誘因なしに, 大水疱を発生した. 組織像は前者は表皮下水疱で, まもなく潰瘍化し2ヵ月後に瘢痕を残して治癒したが, 後者はおそらく表皮内水疱と思われ, 2週間後には特別な治療をせずに瘢痕を残さず治癒した. 光顕で真皮の小血管壁の肥厚が認められたが, 電顕では筋内毛細管壁の著明な肥厚が確かめられた. この病変に関する文献的考察を加えて報告する.