糖尿病
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肝疾患時の糖代謝に関する臨床的研究
野尻 雅美佐野 一郎日野 佳弘尾形 安三
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1975 年 18 巻 6 号 p. 608-618

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抄録

当院内科に入院し肝針生検などにより組織診断された肝疾患患者133名 (肝硬変36, 慢件肝炎活動型139, 同非活動型31, 急性肝炎19, その他8) に糖代謝能検査を施行し, 次の結論を得た.
1) 糖代謝異常 (糖尿病型, 境界型) は, 肝硬変78%, 慢性肝炎活動型62%, 同非活動型39%, 急性肝炎58%と高率にみられ, うち糖尿病型の出現率は夫々36%, 13%, 9%, 11%であった.血糖曲線は糖負荷後に急昇し, 1時間後に頂値を示す急峻型の例が多かった.肝硬変例ないし肥満を伴う慢性肝炎例では, この, 傾向は明らかであった.高インスリン血も同様の傾向がみられた.IRI/BS (1°) は全体縞値の傾向にあつたが, 肥満例ないし肝硬変の糖尿病型を呈する例ではほぼ正常範囲にあった.
2) 糖代謝障害度と肝機能障害度との間には相関がみられ, 特にZTT, γ-globulin (%) とは正の, A/Gとは負の有意の相関がみられた.
3) 高ビリルビン雌は, その原因の如何にかかわらず糖代謝能障害と欄がみられた.IRI/BS (1°) は強い黄疸時 (癌による閉塞性黄疸0.48, 肝炎, 肝硬変0.79) にはやや低値であった.
4) 平均3.5ヵ月の経過観察では, 肝機能と糖代謝能とはほぼ平行して推移する傾向にあった。

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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