抄録
ラット膵ラ氏島浮置法を用いて, インスリン分泌とラ氏島B細胞の糖質代謝, 特にATPの関与について検討した. グルコース刺激によるインスリソ分泌に対する解糖系並びにTCAcycle酵素阻害剤の影響をみたところ, 2-deoxy glucoseは等モルグルコースによるインスリン分泌を, 又1mM iodoacetate及び10mM malonic acidは16.7mMグルコースによるインスリン分泌を有意に抑制した. さらに10mM pyruvate添加はiodoacetateによる抑制を有意に回復したが, 非添加時の値には復さなかった. 次に酸化的リン酸化阻害の影響をみるため, 95%Nr5%CO2の嫌気性状態にすると有意な分泌抑制が認められ, tolbutamide, theophylline, db-cAMP添加によってもその回復はみられなかった又250μg/mlの2.4 dinitrophenolは3.3mMグルコースの場合, その分泌を抑制せず, 16.7mMグルコースの場合は有意に抑制した. さらにラ氏島内ATP含量とインスリン分泌相関を観察したところ, 1mM adenosine添加により, 又グルコース濃度の増加により, その両者はほぼ平行して増加した. 10mM malonateの分泌抑制は1mM adeno. sine添加により有意に回復したが, その際のラ氏島内ATP含量とインスリン分泌の変化の間に解離を認めた. 以上のことより高濃度グルコース刺激によるインスリン分泌機序には解糖系, TCAcyck系, 及び呼吸鎖リン酸化機構が関与し, 中でも酸化的ジン酸化が重要な因子となると考えられ, ラ氏島内ATP含量の増加はキとしてインスリン分泌の第2相に関与すると思われる.