糖尿病
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糖尿病性昏睡覚醒後高度難聴をきたした例
内村 功飯田 吉隆杉山 博通須永 俊明前沢 秀憲
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1976 年 19 巻 1 号 p. 86-92

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抄録
糖尿病性昏睡に伴い, 種々の神経症状を呈した症例の報告がある, しかし, 難聴をきたした症例はきわめて稀れである. われわれは, 高滲透圧血症を伴ったケトアシドーシス性糖尿病性昏睡の覚醒後, 高度の両側性感音性難聴を呈した症例を経験したので報告する.
71歳の男子57歳の時, 糖尿病を指摘されたが放置していた. 発熱にひき続き, 半昏睡状態となり, 7日後に入院. 入院後の検査より, 高滲透圧血症を伴ったケトアシドーシス性糖尿病性昏睡と診断された. 輸液ならびにインスリンの大量投与により12時間後ケトアシドーシスは改善, 入院11日目に意識の回復をみたが, この時, 難聴が気づかれ, 3ヵ月の入院中改善をみなかった. 難聴は両側性の感音性難聴で, 両側性の前庭機能障害を伴っていた. 他に一過性の項部強直, 膀胱障害と下肢の知覚鈍麻・筋力低下を伴っていた. なお, 今回の入院前には, 支障なく日常会話が行われており, 難聴の既往はなかった.
本例の難聴の原因としては, 感染, Furosemide, あるいは抗生物質の副作用, 糖尿病性血管障害なども考えられたが, 高滲透圧血症を伴ったケトアシドーシス性糖尿病性昏睡であり, 併発した神経症状などとも考えあわせ, 昏睡治療に伴う急激な血清滲透圧の正常化による内耳ならびに脳, 末梢神経の障害がもっとも強く疑われた.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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