抄録
インスリン分泌に於けるglucoreceptorの機構と性格を解明する目的で, 細胞膜の脱分極をひきおこす高濃度K+条件下で, 15.5mMα-, β-methyl-D-glucopyranoside (以下, α-, β-MDGと略す) を用い, また2.8mMglucoseを併用し, ラット灌流膵のインスリン分泌動態について検討した.
[実験成績] IK+濃度medium条件を6.2mMから24.8mMへ高めた場合K+刺激による一過性に増大するインスリン分泌がみられ, これにglucoseを併用した場合, さらにその分泌が増大した.またα-MDGは, β-MDGと異なり, 特異的インスリン分泌増強効果を示した.IiK+濃度medium条件を6.2mMから12.4mMへ高めた場合β-MDGは, α-MDGと異なり, 特異的分泌増強効果を示したが, 両者共, glucoseによる併用刺激効果を示さなかった.IIIK+濃度medium条件を6.2mMから12.4mM, 次いで24.8mMへ高めた場合-α-, β-MDG共, 12.4mMK+条件下よりインスリン分泌は増大した。β-MDGは, α-MDGと異なり, 特異的分泌増強効果を示したが, 両者共, glucoseによる併用刺激効果を示さなかった
以上より, 高濃度K+条件下でみられるα-MDGの特異的インスリン分泌増強効果からみて, glucoreceptorの存在が強く示唆され, またβ-MDGの特異的インスリン分泌増強効果からみて, glucoreceptorのconformationが変化し, インスリン分泌を惹起する可能性が示された.