糖尿病
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トルブタマイド静注後の生体内分布に関するオートラジオグラフィーによる研究
勝又 一夫
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1978 年 21 巻 10 号 p. 921-928

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抄録

トルブタマイド14C (10μCi/mg) を体重100gのラットに静注し, 体内分布を全身オートラジオグラフィーを用いて検討し, 等量を経口投与した前報の成績と比較して興味ある結果を得たので報告する.
1.14C原子の一部は静注10分後から胆汁および尿へ排泄された.しかし胆汁中の14C原子のかなりの部分は再吸収され, 尿中へ排泄された.静注10分後にすべての消化管の壁および内容物に一過性に1℃ 原子の増加がみられ, とくに胃, 十二指腸, 空腸, 回腸に著しい.この事実は血中濃度が高くなると一時的に消化管, とくに胃, 十二指腸, 空腸, 回腸から1℃ 原子が排出される可能性を示す。
2.胸管, リソバ, 骨髄中の14C原子は経口投与と異なり静注10分後の早期からきわめて高値となった.また実験期間中高濃度に14C原子が集積し, しかも排泄が遅延した.
3.肺, 肝, 腎は経口投与と同様に高濃度に14C原子が分布したが, 甲状腺では経口投与でみられた高い濃度の集積はない.
4.静注投与では経口投与と異なり, 心臓, 副腎に高濃度に黒化度の集積がみられた.心臓の14C原子の分布は興味深く, 心筋の黒化度はきわめて高く, 心腔内の血液の黒化度はほとんど認められなかった.上述の成績からトルブタマイドの生体内分布が投与方法の差によって異なる事実を明らかにし, 共通してみられた成績と合わせてトルブタマイドの膵外作用, 副作用との関連から考察を加えた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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