糖尿病
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糖尿病と甲状腺機能低下症の合併
北室 文昭安部 喬樹
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1978 年 21 巻 6 号 p. 583-588

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抄録
糖尿病患者では, 甲状腺機能低下症を合併する頻度が非糖尿病者に比較して高いことが, Gauzら, Pirartらによって指摘されている.本邦においては, 両者の合併例の報告は比較的数少なく, これまでに12例が発表されている.
ここに報告する症例は, 57歳の時偶然糖尿病を発見され, 8年後, 65歳で甲状腺機能低下症の合併を指摘された.軽度の貧血と浮腫傾向があり, 甲状腺腫はみとめられなかった.おMRは-34%と著明に低下し, T3 65ng/dl, T4 0.3μg/dl, triosorb test 19.2% と低値を示した.一方, TSHは460μU/mlと著増し, 一次性甲状腺機能低下症と診断した.抗甲状腺抗体は陽性で, 橋本甲状腺炎の終末像として甲状腺の機能低下が起こったものと考えられる.血清cholesterolは204mg/dlと高くなく, このことが甲状腺機能低下症の存在を, 比較的長く見逃がされていた原因でもあった.50gGTTでは, 1時間値190, 2時間値220mg/dlと耐糖能の障害は比較的軽度であったが, IRIは遅延反応を示し, IRI/BS (30分) =0.17であった.また眼底にScott IIbの網膜症をみとめていることからも, 一次性糖尿病の存在は確実と考えられる.
甲状腺末の投与によって, 約10kgの体重減少をみ, 血清cholesterolは201から138mg/dlに下降した.心電図でT波の著明な改善と, 胸部レ線所見で心陰影の縮小をみとめた.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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