抄録
皮膚の限局型アミロイド症の一型であるmacular amyloidosisが糖尿病者に比較的多く認められることを報告した。
好発部位は, これまで知られているように肩肝間, 肩, 上腕伸側で, 肉眼的には皮丘に一致した茶褐色ないし褐色の網目状, 点状色素沈着が特徴的で掻痒は自覚しないか, あっても軽度であった.また組織学的には沈着したアミロイドは真皮乳頭層に滴状または小塊状として認められたが, ヘマトキシリン・エオジン染色では識別困難で, ワン・ギーソン染色 (淡黄色), クリスタル紫, メチル紫 (淡赤紫色) などの染色を要し, 特にチオフラビンーT染色による螢光顕微鏡観察では特有な黄色の螢光を呈し, 微量沈着の場合も検出可能であった.臨床上特徴的な色素斑は, アミロイド沈着部にみられるメラニン色素の滴落によるものと思われた.
アミロイド生成に関しては, 今日なお未解決の部分が多く, 糖尿病者にmacularamyloidosisの多くみられる理由もまた不明である.糖尿病者はしばしば各種の皮膚疾患を合併し, これら皮膚の慢性炎症や掻痒などの刺激が皮膚にアミロイドを沈着させる原因となっているのかも知れない.
しかし, 糖尿病者の膵ラ氏島には高頻度にアミロイドが沈着しているという報告もあるので, 糖尿病的代謝異常がこれらの部位のアミロイド沈着に関与している可能性もあながち否定できず, 今後の研究が必要と思われる.