糖尿病
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13年間に経験した糖尿病妊婦50分娩51児の臨床像
大森 安恵佐中 眞由美横須賀 智子佐久間 正志平田 幸正
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1978 年 21 巻 9 号 p. 813-822

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抄録
わが国にはまだ多数の糖尿病妊婦分娩例の報告がなされていない.私たちは昭和39年2月から52年2月まで, 13年間に糖尿病妊婦42例, 50分娩51児を経験したので, この臨床像を解析した.いわゆる妊娠性糖尿病は除外してある.
13年間における非糖尿病婦人の総分娩例は6,506例で, 糖尿病妊婦分娩例の頻度は0.76%であった.妊婦の糖尿病の発症年令は, 12才から38才に分布し, 平均244才で, 分娩までの平均罹病期間は5.1年であった.50分娩例中妊娠中糖尿病の発症したものまたは, 妊娠時に糖尿病の発見されたものは5例 (10%), 10年以上の罹病期間をもつものは4例 (8%) であった.現時点では年々罹病期間の長い妊婦の増加する傾向はまだみられなかった.妊娠中の糖尿病の治療は, インスリン34例 (68%), 食事療法4例 (8%), 経口剤からインスリンに変わったもの, または食事療法に変わったものが, 各々5例ずつあった.
妊娠中インスリン需要量の増加したものは18例 (52.9%), 減少11例 (32.3%), 不変2例 (5.8%) その他であった.
妊娠中の糖尿病性合併症としては, 網膜症Scott IIからIIIに進行したものが4例 (8%) にみられ, Scott0またはIaのまま不変であったもの45例 (90%), Scott Ibで光凝固術を施行し, 悪化のみられなかったもの1例であった.妊娠を契機に腎症の悪化したものは3例にみられた.妊娠性合併症としては, 無症候性細菌尿が最も多く5例 (10%), ついで妊娠中毒症3例 (6%) であった.
周産期死亡率は妊娠25週で早産となった1例を除く49分娩例中4例 (8.2%), 平均分娩時期は38.2週, 帝王切開27例 (54%), 経膣誘導分娩15例 (30%), 自然分娩8例 (16%) であった.平均生下時体重は3,549gで新生児合併症は, 低血糖が最も多くついで呼吸障害であった.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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