糖尿病
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糖尿病に合併した気腫性腎盂腎炎の1例
気腫性腎盂腎炎63症例の集計
青木 伸工藤 守
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1980 年 23 巻 12 号 p. 1117-1129

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抄録

糖尿病に合併した気腫性腎盂腎炎の1例の報告と, 本症例を含めた過去63症例の臨床像の考察を行った.患者は42歳の糖尿病の既往歴のある女性で, 昭和54年5月発熱と, 右腰部痛を主訴として某病院を受診した.その際高血糖と尿ケトン体陽性を指摘され, 糖尿病性ケトアシドーシスの診断のもとにインスリン治療および輸液を受け糖尿病のロントロールは良好となったが, 抗生物質の投与にもかかわらず解熱せず, 右腎腫瘤を指摘され精査のため当科入院となった.入院時腹部単純写真にて右腎腫瘤に一致したガス像が認められた。種々の検査にてガスは腎実質を主体として存在し気腫性腎盂腎炎と診断した.逆行性腎盂造影では上部尿路に閉塞は認められず, 点滴静注腎盂造影では左腎機能は保たれており, 右腎は感染による組織破壊が高度と考えられた.抗生物質にも反応せず腎摘出術を施行した.術中感染腎から採取したガスをガスクロマトグラフィーにて分析したところ二酸化炭素が検出された.摘出腎の病理組織では重篤な感染による腎組織の高度の破壊が認められた.摘出腎から採取した組織片の細菌培養ではE. Coliが純培養で認められこれが起炎歯と思われた.術後患者は良好な経過をたどり, 糖尿病はレンテインスリン12単位にてコントロールされた.気腫性腎孟腎炎の63症例の検討の結果, 本症には糖尿病の合併が極めて高く, 治療法としては保存的療法よりも腎摘出等の外科的療法が優れていると思われた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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