抄録
糖尿病患者34名の超低比重リポ蛋白, 低比重リポ蛋白, 高比重リポ蛋白に含まれるピタミンE (VLDLVit. E, LDL-Vit. E, HDL-Vit. E) を螢光法にて測定し, 正常対照者と比較するとともに, 糖尿病患者の血糖コントロール状態, 血管合併症, 治療法, 罹病期間との関連性につき比較検討した.
血漿総Vit. E (T-Vit.E) は糖尿病群が1.58±0.10mg/dl (mean±SE) で対照病群の1.30±0.07mg/dl より有意 (p<0.05) に高値であった.VLDL-Vit.EのT-Vit.Eに対する割合は糖尿病群が対照群より有意 (p<0.01) に高値であり, HDL-Vit. Eの割合 (%HDL-Vit.E) は糖尿病群が25.6±1.5%で対照群の34.8±2.1%より有意 (p<0.01) に低値であった. 対象より高脂血症例を除外すると, T-Vit.Eは両群間で差が消失したが,%HDL-Vit.Eは糖尿病群が28.4±2.0%で対照群35.3±2.4%より有意 (P<0.01) に低値であった. 糖尿病群についてみると, 血糖コントロール不良群は良好群より, 血管合併症を有する群は非合併群より, HDLVit. E及び%HDL-Vit. Eは低値であり, 特に%HDL-Vit. Eにその傾向が強かった. インスリン治療群のHDL-Vit. E,%HDL-Vit. Eは食事単独群及び経口血糖降下剤群より有意に低値であった. 罹病期間とVit. Eとの間には一定の傾向はみられなかった.
以上の事実はHDL-Vit. E, 特に%HDL-Vit. Eが糖尿病性血管障害に深く関与している可能性を支持するものである.