抄録
未治療時の糖尿病患者43名のヘモグロビンAICと血糖値との関連について検討し次の結果を得た. 1) 未治療糖尿病患者のHbAICは11.18±2.27%で健常対照群の5.32土0.63%に比し有意に高値であった (p<0.001)。2) 未治療患者のHbAICは同時に測定した空腹時血糖値と正の相関があった (r=0.51, p<0.001). 3) 未治療患者のHbAICはその前後1ヵ月以内に行ったOGTTの血糖1時間値および2時間値とそれぞれ正の相関関係があった (r=0.39, p<0.05, r=0.42, p<0.02).
次に未治療患者43名のうち治療1ヵ月後に再びHbAlcを測定した19名と, すでに治療を行っていたがコントロール不良のため食事療法よりSU剤に変更した2名と, SU剤よりインスリンに変更した4名計25名において治療開始または治療変更直前と1ヵ月後のHbAICの推移を検討した. 1) 糖尿病の治療を開始して1ヵ月後のHbAICの低下は, 血糖を同程度に低下させた場合には食事療法, SU剤, インスリン治療のいずれも同じ程度にみとめられた. 2) 糖尿病の治療によるHbAlcの低下は網膜症のある場合にはない場合に比してよりゆるやかであった。しかしその差は推計学的に有意ではなかった.
以上未治療糖尿病患者のHbAICはその時の高血糖の状態をよく反映した。糖尿病の治療によるHbAICの低下は治療方法により異なることはないが網膜症のあるものはないものに比べて緩慢であった.