糖尿病
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糖尿病治療による膵A細胞障害の可逆性について
特にインスリン低血糖に対する反応性
太田 妙子島 健二沢崎 憲夫下村 泰樹田中 彰田畑 真佐子西野 友善田中 亮一熊原 雄一
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1980 年 23 巻 3 号 p. 227-233

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抄録

成人発症型糖尿病患者15人で, コントロール前, 及びコントロール約1~2ヵ月後に, 糖負荷試験, アルギニン試験, インスリン負荷試験を施行し, それぞれ血糖, C-ペプチド, グルカゴンの反応性の変化を検討した.
過血糖に対してコントロール後は, 耐糖能の改善とC-ペプチド分泌の増加ΣCPR前130土34ng・min/ml, 後276土56ng・min/ml (P<0.05) が認められた. グルカゴンの抑制性は治療前後とも認められず, 又gut-glucagon-like immunoreactivity (GLI) も有意な変化を示さなかった.
アルギニンに対するグルカゴンの反応性は治療後やや低下したが前後とも正常範囲内での変動であった. 一方ペプチドの分泌増加総量ΣCPRでは前32土28ng・min/ml, 後133土21ng・min/ml (p<0, 01) と治療後有意の増加を示した.
これら過血糖, アルギニンに対する反応性の変化は, ほぼ既報のそれらと一致していた. インスリン低血糖時の血中グルカゴンは治療前では基礎値よりの上昇が認められなかったが, 治療後では基礎値130±11pg/mlから明らかに上昇し, 90分値頂値176土14pg/mlに達した. 又分泌増加総量ΣGIも前1158±556pg・min/ml, 後3318土795pg・min/mlと有意の上昇を認め (p<0.05), 糖尿病の膵A細胞の血糖変化に対する反応性の障害は膵B細胞と同様, 一部可逆性であることが明らかとなった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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